まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

『源氏物語』覚書(2)

目次 『源氏物語』(承前) 桐壺(承前) 文献 sakiya1989.hatenablog.com 『源氏物語』(承前) 桐壺(承前) (『校異源氏物語』巻一、5頁) ……はじめより、我は、と思い上がりたまへる御方、めざましき物におとしめそねみ給ふ。同じ程、それよりげらふの…

『源氏物語』覚書(1)

目次 はじめに 『源氏物語』 桐壺 単語 いづれの御時にか 文献 はじめに 『源氏物語』といえば、知らない者はいないといっても過言ではないほど有名な古典文学作品である。にもかかわらず、恥を忍んでいうと、筆者はこれまで中学や高校で『源氏物語』を読ん…

読書前ノート(40)ジョン・ダワー『容赦なき戦争』/『敗北を抱きしめて』

目次 ジョン・W. ダワー(猿谷要監修、斎藤元一訳)『容赦なき戦争 太平洋戦争における人種差別』平凡社ライブラリー、2001年。 ジョン・ダワー(三浦陽一・高杉忠明訳)『増補版 敗北を抱きしめて』岩波書店、2004年。 世俗的・通俗的な「テキスト」へのこ…

マルクス『資本論』覚書(23)

目次 マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 「ある物」の分析 文献 sakiya1989.hatenablog.com マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 「ある物」の分析 (1)ドイツ語初版 ある物は,〈交換価値〉でなくとも,〈…

ライプニッツ『モナドロジー』覚書(6)

目次 ライプニッツ『モナドロジー』(承前) モナドにおいてその生成と消滅のプロセスはあり得るか 文献 sakiya1989.hatenablog.com ライプニッツ『モナドロジー』(承前) モナドにおいてその生成と消滅のプロセスはあり得るか ライプニッツはいう。 (1)…

ライプニッツ『モナドロジー』覚書(5)

目次 ライプニッツ『モナドロジー』(承前) ライプニッツとスピノザ 微細な変化、一と多 文献 sakiya1989.hatenablog.com ライプニッツ『モナドロジー』(承前) ライプニッツとスピノザ (1)エルトマン版(1839年) (2)ゲルハルト版(1885年) しかも…

羽田空港航空機衝突事故

2024年1月2日、羽田空港で日本航空(JAL)旅客機と海上保安庁の航空機が衝突事故を起こした。旅客機に乗っていた乗員乗客は全員無事避難できたが、海保庁航空機に搭乗していた船長を除く隊員5名が亡くなった。この事故の詳細については、のちに調査報告書で…

令和6年能登半島地震とX=旧Twitter

2023年12月31日に放送された第74回NHK紅白歌合戦では、YOASOBI「アイドル」のパフォーマンスが話題になった*1。「アイドル」の歌自体が他の追随を許さない魅力を放っていたのだが、そのダンスパフォーマンスにK-POPアイドルグループが参加したことで、故・ジ…

読書前ノート(39)日本ヘーゲル学会編『ヘーゲル哲学研究 第29号 2023』

目次 日本ヘーゲル学会編『ヘーゲル哲学研究 第29号 2023』(現代思潮新社、2023年) 加藤尚武「科学と哲学の断絶」 真田美沙「ヤコービ哲学における学的証明とその労働に関する批判についての考察——ヘーゲルのヤコービ批判の再検証のために——」 日本ヘーゲ…

読書前ノート(38)ニッコロ・マキァヴェッリ『ディスコルシ 「ローマ史」論』

ニッコロ・マキァヴェッリ『ディスコルシ 「ローマ史」論』(永井三明訳、筑摩書房、2011年) 歴史に学ぶことの実践 これほどまでに外交官としての彼の経験が生かされている書籍があるだろうか。リウィウスの『ローマ史』を参照しているとはいえ、その筆致は…

読書前ノート(37)カルロ・ギンズブルグ『それでも。マキァヴェッリ、パスカル』

カルロ・ギンズブルグ『それでも。マキァヴェッリ、パスカル』(上村忠男訳、みすず書房、2020年) 「それでも」の〈逆説〉 従来のマキァヴェッリ研究では「ヴィルトゥ virtù」や「フォルトゥーナ fortuna」という概念が鍵句として参照されてきた。本書の著…

読書前ノート(36)伊藤 邦武/山内 志朗/中島 隆博/納富 信留(責任編集)『世界哲学史』

伊藤 邦武/山内 志朗/中島 隆博/納富 信留(責任編集)『世界哲学史』(筑摩書房、2020年) 「世界哲学史」という新たな試み 「世界哲学史」とは聞きなれない言葉である。「哲学史」に「世界」がかかっているが、この「世界」は形容詞であろうか。形容詞…

ヴィーコ『新しい学の諸原理〔1725年版〕』覚書(1)

目次 はじめに ヴィーコ『新しい学の諸原理〔1725年版〕』 著作の観念 単語 文献 はじめに 以下ではヴィーコ『新しい学の諸原理〔1725年版〕』(上村忠男訳、京都大学学術出版会、2018年)を読む。 本書を取り上げる意義は、まさにヴィーコ『新しい学』の〈…

弊社の販売契約社員5年満期雇い止めに妥当性はあるか(3)

sakiya1989.hatenablog.com 販売契約社員5年雇い止めには、場合によっては解雇権濫用法理(労働契約法第16条)が類推適用される場合があり得ると筆者は考える。なぜならば、(1)販売契約社員が行なっている業務は販売職正社員と全く変わらない(にもかかわ…

アリストテレス『政治学』覚書(5)

目次 アリストテレス『政治学』(承前) 男性と女性、主人と奴隷における自然と必然 文献 sakiya1989.hatenablog.com アリストテレス『政治学』(承前) 男性と女性、主人と奴隷における自然と必然 まず、互いに相手を必要とし、相手なしでは生きられない者…

アリストテレス『政治学』覚書(4)

目次 アリストテレス『政治学』(承前) アリストテレスの発生論的アプローチ 単語 文献 sakiya1989.hatenablog.com アリストテレス『政治学』(承前) アリストテレスの発生論的アプローチ そこで、いま私たちが研究対象にしている[共同体という]事物につ…

アリストテレス『政治学』覚書(3)

目次 アリストテレス『政治学』(承前) アリストテレスの分析的探究方法 文献 sakiya1989.hatenablog.com アリストテレス『政治学』(承前) アリストテレスの分析的探究方法 いま述べたことは、これまで私たちを導いてきた探究方法に従って考察すれば明確…

アリストテレス『政治学』覚書(2)

目次 アリストテレス『政治学』(承前) 共同体の人数規模に応じて共同体の性質は異なる 文献 sakiya1989.hatenablog.com アリストテレス『政治学』(承前) 共同体の人数規模に応じて共同体の性質は異なる したがって、共同体(共同関係)ならばみな同じは…

アリストテレス『政治学』覚書(1)

目次 はじめに アリストテレス『政治学』 共同体の目的と国家共同体について 単語 ラテン語訳 文献 はじめに 今日、我々にとって、アリストテレス『政治学』(Ἀριστοτέλης, Τα Πολιτικά)は何を残すか。 本書は政治哲学および国家学の古典と言われる。従来、…

総括資料が書けない

はじめに 前回の総括資料作成が5月であったから、およそ5ヶ月しか経っていないのだが、再び総括資料をつくる時期になってしまった。下期に入り、再び異動になってしまったのも束の間、「上期は何をしたか」「下期はどうするか」を考えなければならない。もち…

フーコー的実践——〈パノプティコン〉論のポテンシャル(1)

目次 はじめに 一般化可能な作用モデルとしての〈パノプティコン〉 文献 はじめに 前回、パノプティコン型マネジメントについて言及した。それに伴い、手元にあるフーコーの文献を捲ってみたら、直近では〈パノプティコン〉への言及がほとんどないことに気が…

悪用の人文学——パノプティコン型マネジメントの罪とその贖い

〈パノプティコン〉は一般化が可能な一つの作用モデルとして理解されなければならない。人間の日常生活と権力との諸関係を規定する一つの方法として—— (ミシェル・フーコー『監獄の誕生——監視と処罰』田村俶訳、新潮社、1977年、207頁) 目次 はじめに 非正…

ヘーゲル『精神現象学』覚書(12)

目次 ヘーゲル『精神現象学』(承前) 序文(承前) 教養形成の始まり 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『精神現象学』(承前) 序文(承前) 教養形成の始まり 自己を形成し教養を身につけ(ビルドゥング)、実体的生命の直接態から抜け出す(ヘラ…

読書前ノート(35)マルセル・モース『贈与論 他二篇』

マルセル・モース『贈与論 他二篇』(森山工訳、岩波書店、2014年) 純粋な「贈与」と不純な「贈与」 私の仕事は「販売」なのだが、「販売 sales」と「贈与 don(仏), gift(英)」とのあいだには、少なからぬ隔たりがある。企業は「ノベルティ(販促品)」と称…

ヘーゲルと仏教

はじめに あらかじめ断っておくが、ここで「ヘーゲルと仏教」について何かが明らかになるということではない。ここでは筆者自身が『「ヘーゲルと仏教」というテーマ設定もアリだな』と思えるようになったということを、ただ単に書き留めておくに過ぎない。 …

ヘーゲル『美学講義』覚書(1)

はじめに 本稿ではヘーゲル『美学講義』(Vorlesungen über die Aesthetik)を取り扱う。 ジャック・デリダ(Jacques Derrida, 1930-2004)はその代表作『弔鐘』の中でヘーゲル『美学講義』の一節を参照している。筆者もまたデリダ『弔鐘』を解釈している最…

ジャック・デリダ『弔鐘』覚書(11)

目次 ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) 【左】ヘーゲル欄 インドの男根柱 文献 sakiya1989.hatenablog.com ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) 【左】ヘーゲル欄 インドの男根柱 Deuxième passage: la colonee phallique de l'Inde. L'Esthetique en décrit …

ジャック・デリダ『弔鐘』覚書(10)

目次 ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) 【左】ヘーゲル欄 花の宗教 文献 sakiya1989.hatenablog.com ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) 【左】ヘーゲル欄 花の宗教 Premier passage : la religion des fleurs. Dans la Phénoménologie de l'esprit, le déve…

ジャック・デリダ『弔鐘』覚書(9)

目次 ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) (左)ヘーゲル欄 遊び戯れる二つの特殊な事例 文献 sakiya1989.hatenablog.com ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) (左)ヘーゲル欄 遊び戯れる二つの特殊な事例 Deux passages très déterminés, partiels, particul…

ヘーゲル『法の哲学』覚書:「家族」篇(6)

目次 ヘーゲル『法の哲学』(承前) 第三部「人倫」第一章「家族」(承前) 「自然的衝動」よりも優位に立つ「精神的な絆」 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『法の哲学』(承前) 第三部「人倫」第一章「家族」(承前) 「自然的衝動」よりも優位に…