まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

家族というメタファー

昨日、フレデリック・ラルー『ティール組織』(鈴木立哉訳、英治出版、2018年)を買って読みました。類稀に見る良書だと思います。

ラルーは、会社組織を主に5つに類型化し、これらの類型を用いて組織の発達段階を示しています。その際に、ラルーはインテグラル理論を参考にして、組織の発達段階のそれぞれに色をつけています。

ラルーによれば、組織は、前組織的段階では①無色、②神秘的(マゼンタ)、原初的な組織段階では③衝動型(レッド)、そして次第に④順応型(アンバー)、⑤達成型(オレンジ)、⑥多元型(グリーン)、⑦進化型(ティール)へと移行するような7つのステージに分類されます。

さらにそれぞれの組織はメタファーで表現され、衝動型(レッド)はオオカミの群れ、順応型(アンバー)は軍隊、達成型(オレンジ)は機械、多元型(グリーン)は家族、進化型(ティール)は生命体のメタファーで表現されています。

nol-blog.com

で、ここまでは前置きです。ぶっちゃけティール組織について書きたいわけじゃないんです。

僕がこの本を読んで気になったのは、多元型(グリーン)組織のメタファーが「家族」であるとされている点です。

 達成型(オレンジ)パラダイムは組織を機械とみているが、ほとんどの多元型(グリーン)組織は自社を家族にたとえる。多元型(グリーン)組織のリーダーたちの発言に耳を傾けると、「家族」という言葉がそこかしこに聞こえるはずだ。「従業員は同じ家族の一員」「皆が一緒」「お互いに助け合う」「お互いのために存在している」といったように。(フレデリック・ラルー『ティール組織』英治出版、2018年、60頁)

しかし、ラルーはこの本で「家族」についてはほとんど説明していません。そうすると、我々が多元型(グリーン)組織について理解しようとする際に、家族のメタファーによって多元型(グリーン)組織の理解が助けられるというよりは、むしろ逆に多元型(グリーン)組織の特徴を通じて、メタファーとして用いられている家族のあり方を類推することになります。

さて、ここで読者の方に「いやいやいや、「家族」なんて説明しなくても分かるでしょ?」と突っ込まれそうです。が、よく考えて見てください。

・あなたの育った家族では多様性は尊重されてきましたか?

・一般的に家族とは、多元型(グリーン)組織のように、その中で個人の多様性を尊重し、自律性を促し支援するようなものだと言えますか?

家族とは、国や地域ごとに異なり、家族それ自体が多様性に満ちた組織形態ではないでしょうか。おそらくアメリカの家族のあり方と、日本、インド、イギリス、アフリカの家族のあり方は同じではないでしょうし、ラルーが会社組織を類型化できたのと同じぐらい、家族の類型と発達段階についても解明される必要があると思います。

もちろん『ティール組織』は会社組織についての本であり、家族の説明にページを割く必要はそれほどないとは思います(著者もまさか自費出版の本が12ヶ国語に翻訳されるとは予期していなかったでしょう)が、私には著者のラルーが無意識のうちに自分自身の育った国地域の文脈(コンテクスト)を前提として、その中で認識する「家族」というものをメタファーに用いているような気がしてなりません。

実は、200年ほど前に市民社会や会社を「家族」というメタファーで表現したヘーゲルという哲学者がいました。ヘーゲルはいわゆる『法の哲学』(1821年)のなかで市民社会を「普遍的な家族」(§239)と捉え、会社コルポラツィオを「第二の家族」(§252)として捉えました*1ヘーゲルは、市民社会の前章で家族の内容について理念的に説明しているので、市民社会や会社を家族のメタファーを用いて説明しても、その内容はある程度定まっています。そのため、ヘーゲルの場合には、ラルーのように「家族」を曖昧な意味でメタファーとして用いることは避けられているといえます。

今日、「家族」について考えるのだとすれば、理想的な家族だけでなく、リアルな家族の特徴や欠陥についても目を配らせなければならないと感じます。もっと言うと、家族をメタファーとして用いる際には、パターナリズムドメスティックバイオレンス(DV)、ネグレクトのような家族における欠陥ないしは負の側面をも考慮に入れる必要があるということです。なぜかというと、会社組織を家族のメタファーで表現できるのだとすれば、会社組織の中でも家族におけるネガティブな側面が現れる(反映される)可能性があるからです。それは、いわゆる「ハラスメント」と呼ばれるものとして現れていると言えるでしょう。ラルーの組織類型を逆に家族に反映させるならば、恐怖で統制する衝動型(レッド)の家族というものもありえるかもしれません。家族というメタファーが多元型(グリーン)組織のようにポジティブな側面で現れるならば良いのですが、その方向を誤るとコンプライアンス的に大変問題となるわけです。

結局、何が言いたいかというと、「家族」をメタファーとして用いる際には、いささかセンシティブに取り扱う必要があるということです。

*1:ヘーゲル市民社会における家族的なものについて、詳しくは拙著「ヘーゲルの権利論」(所収:田上孝一編『権利の哲学入門』社会評論社、2017年)をご覧下さい。

「手抜き」のススメ

今回は、「手抜き」について書きたいと思います。

 

みなさん「手抜き」に対してネガティブなイメージを持っていませんか。

僕は少し前まで、手を抜いちゃダメだと思っていました。例えば、大学院での研究とか、仕事とかでです。なんで手を抜いちゃダメかと思っていたかというと、手を抜いたらダメなやつになると思っていたからです。

でも、「手を抜いちゃダメだ」と思っているからといって、何事も必ずしもうまく行くわけじゃないんです。いや、むしろ僕の場合は非効率で、つまり要領が悪くてダメダメな結果ばかり残してきました。

手を抜かないようにしようとするとどうなるか。おそらく人は無理できるまで頑張ろうとするんです。まあ無理して頑張るのも、しばらくは続けられます。でも、二年、三年と経っていくうちに、どこかでプッツンってなっちゃうんじゃないかな。

もちろん多少無理が必要な時期もあるかもしれません。例えば、未経験の学習を積んでいる頃などは。

しかし、実はその後が問題で、一定期間を越えた後は、継続する力が重要になってくると思います。というのも、短期的に成果を挙げることは、一時的に無理すれば可能なので、割と簡単ですが、成果を短命に終わらせるよりも、むしろ継続的に結果を出していく方がはるかに難しいのです。

最近、企業において「サステナビリティ(sustainability)」すなわち持続可能性の重要性が聞かれるようになってきましたが、サステナビリティの重要性はちょうど人間個人、ひとりひとりにおいても当てはまると言えるでしょう。人間が生きていくのも仕事をするのも同じ個体の生命活動なのであって、これはどちらかというとワークライフバランスと表現されることが多いですが、その根本には恒常性(ホメオスタシス)のバランスや、サステナビリティ(持続可能性)の観点が入っているように思います。無理を続けるならば、ワークライフバランスサステナビリティは実現不可能です。

それで「手抜き」に話を戻すと、仕事で継続的に成果をあげていくためには、「手抜き」こそが非常に重要ではないかと思うわけです。ここで反発が来そうですね。仕事頑張らなくていいのか、と。

しかし、よく考えてみてください。「手を抜くこと」は、実は知性が要求される行為だと思うんです。むしろ手を抜くことによって、これまでイノベーションが促進されて来たのではないかと思うぐらいです。

例えば、作業の機械化やAI化は、ある意味「手抜き」のためのテクノロジーだと言えます。もし人間が有史以来、「手抜き」をしなければ、おばあさんは洗濯機を使わずに河へ洗濯に行ってしまいますし、駅の改札は機械ではなく人が目視確認で出入りをチェックすることになってしまいます。GUIがなければ、人はコマンドプロンプトでいちいちコードで命令しなければならなくなります。しかし、もうお気付きのように退屈なことはPythonにやらせれば良いのです! 

また最近ではRPA(Robotic Process Automation)やEPA(Enhanced Process Automation)、CA(Cognitive Automation)というワードが聞かれるようになりました。これらは単純作業の代替か、イレギュラー対応可能か、ビッグデータをもとに判断を下せるかによって分類されますが、いずれもロボットに作業を代替させることで「手抜き」を可能にするとともに、同時に人間がさらなる創造的な仕事に着手することを助けます。

bizhint.jp

テクノロジーの進歩とは、人が「手を抜く」ためにあると言っても過言ではないと思います。そして「手抜き」によって生まれた空隙を使って、さらに人は他の活動をできるようになるので、結果的にはパフォーマンスは向上していくはずです。こうして経済発展を可能にするものをイノベーションと呼びます。逆にイノベーションが起こらなくて困っているのであれば、もしかすると「手を抜くこと」を怠っているからかもしれないのです。

では、イノベーションを起こすには、どうしたら良いのでしょうか。まずは「手抜き」ができそうな作業を探してみましょう。もし「手抜き」ができそうな部分を発見したら、どうしたらロボットに代替できるのかを考えてみましょう。こういう発想がもしかすると新たなイノベーションを生み出すかもしれません。

採用と投資 ー投資人材と消費人材ー

今回は採用と投資、人材投資について書きたいと思います。

最近、投資に関するブログや本を読んでいるのですが、投資への考え方や手法が、会社で人を採用する際にも応用できるんじゃないかなーと考える時があります。例えば、分散投資という手法が採用でも使われているのではないでしょうか。

近頃データサイエンスが人気なので、「ハイパフォーマーの要素を分析すれば、これから採用される人間がハイパフォーマーになれるかどうかを判別できるのではないか」と、色々試行錯誤している時代でしょう*1。データサイエンスそれ自体は良いのですが、市況は常に変わりますし、過去の成功事例がずっと続くわけではないので、人材を選ぶ際は、ある程度個々人の得意なスキルやマインドセットを分散させていく方がリスクは回避できるのかもなーなどと思っています。同じ職種でも、ハイパフォーマーを支えるミドルパフォーマーというのもありえますし、両者がいなければハイパフォーマーもハイパフォーマンスを成り立たせることができなかったりしてね*2。攻め(≒売り)に強い人間もいれば、守り(≒クレーム対応)に強い人間もいるわけなので。

ちなみに分散投資には、買いの時間をズラす時間分散という考え方もあります。採用も一気にガッと採るよりも、ドルコスト平均法のようにコツコツ採っていくのが良さげです。

あとは採用にバリュー投資の考え方も使えそうですね。「その人材、割安なら買ってみれば?」という感じです。

ちなみに採用が投資だとすれば、雇用も投資だと考えることができそうです。これはおそらく一般に人材投資と呼ばれているものです。

会社は社員に毎月給料を払うわけですが、社員が業務内で能力を高めるだけでなく給与を自己投資に回して磨きをかけてくれれば、人材としての価値が高まっていくんじゃないでしょうか。

給与を自己投資に回してくれる人材を「投資人材」と呼ぶことにしましょう。人材も会社の資産だと考えれば、人材という資産価値が複利で増えていくのが望ましいですよね。

反対に、給与が社員にとって単なる消費か浪費にしかならないのであれば、ポートフォリオを少し見直して、リバランス(組織編成、あるいはリストラ?)が必要かもしれません。

給与が単なる消費や浪費に消えていくような社員のことを「消費人材」と呼ぶことにしましょうか。これはなんとも悲しい響きですね。

自己投資の仕方は十人十色で完全に個人に任されているといえますが、僕の場合は情報収集が得意なので、主に休日に読書やネットサーフィンをしながら、勝手に独自研究を進めたり、業務に関係ない本を読んだりしています。このブログでは自分から情報を発信していますが、そのために下書きノートとしてスプレッドシートに情報を整理したりもしています。一言で言うと、インプットとアウトプットの両方を行なっています。

また僕は実際に投資も行なっています。米国株25社に180万円を分散投資し、またロボアドバイザーのウェルスナビで90万円を運用しています。

職場で知り合った友達向けにLINEで自分の投資の近況や情報を伝えているのですが、どうやら最近、一部の友達からは僕の発信する内容が難しくてついていけないという声が上がっていることを知りました。その友達は「ロボアドバイザーって何?」という状態だそうです。難しくてついていけないこと自体は問題ではなく、むしろどんどん発信してほしいと言われたのですが、もしかすると普通の人が普通に仕事していたら投資のことってあまり知らないのかもしれませんね。

*1:この点、セプテーニホールディングスの人的資産研究所の論文が示唆に富む。例えば、人的資産研究所「2015年7月度 研究レポート 人事データマネジメントおよび統計技術を活用した『科学採用』キャリア編」では、「E(環境との相性)」と「P(パーソナリティ適合度)」という2つの軸から9つのboxに区分して分析対象者をスコア判定している。

*2:統計学的には同一のKPIで測られる人数が多ければ多いほど正規分布に近づくのであり、その意味ではハイパフォーマーは常にミドルパフォーマーやローパフォーマーなくして存在し得ない(測定できない)。しかし、だからといってハイパフォーマーを集めることが無意味だということにはならない。むしろ重要なのは積分の考え方であり、全体のパフォーマンスの総和を大きくすることを中心に考えることが重要であると思われる。

イタリアの仮想通貨取引所BitGrailで盗まれたNanoについて(DAGとブロックチェーン)

2018年1月はCoincheckにおけるNEM流出事件や、仮想通貨の大幅下落など、暗号通貨・仮想通貨業界においては激動の月となりましたが、そんな中、またもやイタリアの仮想通貨取引所BitGrailで取引されていた1700万ものNANOが盗まれたというニュースが飛び込んできました。

そこで今回は、この盗まれたNanoについて少し書きたいと思います。

 

まず暗号通貨の表記がややこしい点から説明します。

NanoはもともとRailBlocksという名前の暗号通貨でした。

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RailBlocks(XRB)がリブランドされたものがNanoです。

この暗号通貨の特徴を1つ挙げるとするならば、DAG(Directed Acyclic Graph、有向非循環グラフ)を導入した暗号通貨という点でしょう。

ブロックチェーン型暗号通貨では、諸々の取引のかたまりから成るブロックの一連の繋がりのことをブロックチェーンと呼びます。ブロックとしてまとまった諸々の未承認取引をマイナーが承認することで、過去の一連の承認済み取引に新たなブロックが付け加えられていきます。

これに対してDAG型暗号通貨では、諸々の取引をブロックとしてまとめることはしません(だからブロックチェーンではないと言われます)。その代わりに、過去の諸々の取引に対して新しく取引を行う者が承認することによって、未承認取引を承認済みステータスに変えます。未承認の取引は複数の新しい取引者によって承認される必要があります。もし改ざんを行った場合、改ざんされた取引だけでなく、その取引の後に続く複数の取引も承認されなくなってしまいますので、改ざんが容易にバレてしまいます。

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btcnews.jp

business-infinity.jp

 Nanoの他にDAGが採用されている暗号通貨にはIOTA、Byteball、Aidos Kuneenなどがあります。特にIoTに最適化された暗号通貨であるIOTAはすでに有名で知っている方も多いのではないでしょうか。IOTAではDAGがTangle*1と呼ばれています。

ちなみにひとつ気になるのは、IOTAやByteballのような他のDAG型暗号通貨とNanoの違いです。他のDAG型暗号通貨が基本的にブロックチェーンを用いていないのに対して、NanoはDAGだけでなくブロックチェーンも用いている点で異なります。この点で、Nanoは「半(semi-)DAG型暗号通貨」だと言えるのではないでしょうか。他のDAG型暗号通貨の場合、DAGを用いることによってブロックチェーンの制限(ブロックサイズの問題など)を取り除くことができると説明されるのですが、これに対してNanoはブロックチェーンとDAGの両方を組み合わせることによって、結局のところブロックチェーンの制限に足を引っ張られてしまうことになりはしないのかと疑問に思います。

*1:Tangleとは「絡み合い」のこと。Tangleの詳しい内容についてはSerguei Popov, "The Tangle", 2017を参照

アルトコインあるいはビットコインのオルタナティブについて

 最近、様々な暗号通貨(アルトコインや草コイン)について調べていました。

 アルトコインは1000種類以上存在し、そして現在未来も新しいプロジェクトが続々と登場していきます。アルトコインの中には、Nexiumのようにゲーム通貨としての利用を目指すものや、QASHのように流動性のある金融プラットフォームを目指すもの、Qtumのようにビットコインイーサリアムに用いられているシステムの欠陥の解決を目指したり量子コンピュータに耐えうる機能を持つものがあったりと、極めて多様性に満ちています。

 アルトコインはそのあまりの数の多さに圧倒されていますが、一部のアルトコインには目指すところや内容的に重複している部分も散見されます。おそらく今後は徐々に統廃合を繰り返しつつ、業界横断的なサービスを提供可能なプラットフォームとしてのアルトコインへと収束していくか、あるいは同様のサービスを提供するプラットフォームが地域ごとに名前を変えて普及するのではないか、と僕は予想します。

 ところで、ビットコインやいわゆる「仮想通貨(virtual currency)」については、投機的な暴騰暴落の話題ですでに世間を騒がせているので説明するまでもないとは思いますが、一応念のため書いておくと、これらの通貨は暗号技術を基盤としているため、英語では通常「暗号通貨(crypto currency)」と呼ばれています。ビットコインは、サトシ・ナカモトの論文に端を発し、P2P(peer-to-peer)ネットワークをコアテクノロジーとする分散的で非中央集権的な貨幣システムです。ビットコインはSHA-256をベースとした「プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work, or PoW)」を採用していますが、細かく見ていくとPoWには他にもLitecoinDogecoin*1のようにscryptベースのPoWや、MoneroのようにCryptoNodeベースのPoWがあります。 ビットコイン自体が既存の通貨にとって代わるオルタナティブ(代替物)ですが、さらにそのまたビットコインオルタナティブとしてのコインが「アルトコイン(altcoin, オルトコインとも)」と呼ばれています。

 1つ注意を促しておきたいのが、草コインの売買と動向です。

 アルトコインと草コインの境界線は明確ではありませんが、草コインはその価格が極めて低い(例えば草コイン1つ買うのに0.0000001btcなど)ので、海外の取引所では銘柄をとっかえひっかえしながら短期的な暴騰暴落を起こしています。

 しかし、暴騰したコインでさえまともなコインとなりうるのか疑問を持つようなコインが多数存在します。というのも、中にはホワイトペーパーさえ示されていないのに期待だけで煽り煽られタワーのようなチャート形成をしているものや、PoS利子率の高さや将来的なバーン(焼却)を呼び水としているものがあります。したがって、草コイン市場は投資というよりは全くもって投機的だと言えます。自分は投機そのものを否定するつもりはありませんが、どちらかというと投機のためのアルトコインよりは、既存の社会問題の解決に資するようなアルトコイン、規制的な社会の革命となりうるようなアルトコインを応援したいと考えています。

 そこで今回紹介したいのが、Bitlandというアフリカの土地登記台帳プロジェクトです。

www.coindatabase.net

アフリカでは中央集権的な土地登記の仕組みがない。地域の族長や地方政府が管理している。これでは外国企業のインフラ投資がなかなか進まない。ブロックチェーンを用いて、土地登記が分散管理でもインフラ投資を進めやすくするというのがビットランドのアイデアであり、実際ガーナのいくつかの地域で試みが始まっているそうだ。(日経産業新聞、2016年3月3日付

欧米先進国とは異なって、アフリカは部族社会という前近代的な社会であり、土地所有権の仕組みが整備されていないようです。自分の持っている土地が証明できないことには、融資に支障をきたします。ブロックチェーン技術の導入によって土地所有権が明確化され、これによって銀行で土地を担保とした融資が可能となる。ということは、要するにアフリカの資本主義化を阻害していた要因が取り除かれるということです。あるいはブロックチェーン技術および暗号通貨の導入によって、そもそも銀行に頼る必要すら無くなってくるかもしれません。

*1:とにかくこのDogecoinの柴犬が可愛いのである!!

映像ストリーミングサービス:Netflixを支える技術

タイトルの「映像ストリーミング」とは、具体的にはNetflixやAmasonプライムビデオのようなサービスを念頭に置いている。単に「ストリーミング」と書いてしまうとSpotifyのような音楽ストリーミングサービスも入ってきてしまうため、今回は「"映像"ストリーミング」とした。

映像ストリーミングサービスを支える技術には、膨大なサーバーであったり、コンテンツ視聴数のビッグデータに基づくレコメンデーション機能やエンコード技術が直ちにあげられるだろうが(詳しくは以下のリンクを見ていただくことにして)、今回は主に映像技術の観点から書きたい。

www.phileweb.com

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NetflixAmazonプライムビデオのような映像ストリーミングサービスは、徐々にコンテンツの数を増やしているだけでなく、インターネットを通じて高画質な映像を家庭で手軽に消費できるようにした点で革命的だ。

映像コンテンツがこれらのサービスで配信されていれば、個人的にはDVDやBDで買う必要を感じない。もちろんストリーミングである以上、情報を圧縮する。高品質映像かつロスレスオーディオを楽しみたいマニアックな層には少々物足りないかもしれないが、それは全体で見ればほんの一握りの人々にとどまるだろう。

今後は、NetflixAmazonプライムビデオのような映像ストリーミングサービスが膨大なコンテンツデータセンターのような役割を果たすと思われる。そしてそれはYouTubeとは違った意味でだ。YouTubeでは個人がアップロードするので、映像コンテンツの多様性はダントツだが、著作権問題は元より、品質が玉石混淆なのが難点だ。

ここで品質と言っているのは主にエンコード処理のことだ。YouTubeで4K動画をVP9でエンコーディングしたからといって、映像の画質は元データの画質に依存する。素人であれば時にインターレース二重化、フレームレートもメチャクチャなコンテンツが混ざることあるだろう。

メチャクチャなエンコーディングでは、サブスクリプションモデルの映像ストリーミングサービスに金を払うわけがない。大手の映像ストリーミングサービスが褒められるべきなのは、モバイルでの再生に対応できて、なおかつドルビービジョンやUltra HD、ドルビーオーディオに対応することで、BDを購入しなくてもホームシアターを実現できてしまうほどの技術に対応しているからである。最新のiPhoneAndroidスマートフォンもドルビービジョンに対応しつつある。

japanese.engadget.com

www.pronews.jp

家電(2)防水・防塵

今回は防水・防塵についてまとめます。

 

電子機器にはIPという防水・防塵の等級が示されています。IP □□などと表記され、IP [防塵等級] [防水等級]の順に表記されています。

例えば、iPhone7から最新のiPhone8やiPhone Xの防水/防塵性能は、IP67です。つまり、防塵性能は最高の6等級である「耐塵型」であり、防水性能は二番目の水準である「防浸型」であることがわかります。

6. iPhone 7iPhone 7 PlusiPhone 8iPhone 8 Plus、iPhone Xは防沫性能、耐水性能、防塵性能を備えており、実験室の管理された条件下でのテストにより、IEC規格60529にもとづくIP67等級に適合しています。防沫性能、耐水性能、防塵性能は永続的に維持されるものではなく、通常の使用によって耐性が低下する可能性があります。iPhoneが濡れている場合は充電しないでください。クリーニングと乾燥の方法についてはユーザガイドをご覧ください。液体による損傷は保証の対象になりません。

iPhone - モデルを比較する - Apple(日本)

 

(1)防水等級

水の侵入に対する保護の程度を示す防水等級には0〜8までの等級があります。

保護等級 内容
0級 特に保護がされていない
1級 鉛直から落ちてくる水滴による有害な影響がない(防滴I形)
2級 鉛直から15度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない(防滴II形)
3級 鉛直から60度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない(防雨形)
4級 あらゆる方向からの飛まつによる有害な影響がない(防まつ形)
5級 あらゆる方向からの噴流水による有害な影響がない(防噴流形)
6級 あらゆる方向からの強い噴流水による有害な影響がない(耐水形)
7級 一時的に一定水圧の条件に水没しても内部に浸水することがない(防浸形)
8級 継続的に水没しても内部に浸水することがない(水中形)

電気機械器具の外郭による保護等級 - Wikipedia

 

(2)防塵等級

人体・固形物体に対する保護の程度を示す防塵等級には0〜6までの等級があります。

保護等級 内容
0級 特に保護がされていない
1級 直径50mm以上の固形物が中に入らない(握りこぶし程度を想定)
2級 直径12.5mm以上の固形物が中に入らない(指程度を想定)
3級 直径2.5mm以上のワイヤーや固形物が中に入らない
4級 直径1mm以上のワイヤーや固形物が中に入らない
5級 有害な影響が発生するほどの粉塵が中に入らない(防塵形)
6級 粉塵が中に入らない(耐塵形)

電気機械器具の外郭による保護等級 - Wikipedia

 

さて、防水・防塵等級をそれぞれWikipediaから引用しましたが、よく見るこういう表の内容以外に、実は等級を決めるテスト方法がありまして、むしろテスト方法の方が実情を示していると言えます。テスト方法は以下のページに記載があります。

IP規格・防水保護構造および保護等級(PDF)」(http://www.avccorp-jpn.co.jp/technicalguide/pdf/IP_2014.pdf

 

 重要なことは、防水・防塵対応といっても、その製品がどの等級に該当する品質なのかを確かめることです。